エクス・マキナ(アレックス・ガーランド/2015/イギリス) 内側から降り立つデウス・エクス・マキナ

 20160622 池袋HUMAXシネマズにて。公式サイトはこちら。

www.exmachina-movie.jp

日本公開あってよかったですね~嬉しいですね~。わたしはドーナル・グリーソンとても好きなので大変楽しみにしていた一本でした。

 

タイトルの通り、最後に機械仕掛けの神が表れてすべての展開をひっくり返すというある意味では素直な映画でした。

アレックス・ガーランド監督作品は「28日後」を見たことがあります。ゾンビが足速いやつだよね。わたしはさほどゾンビ映画に思い入れがないのでゾンビが足速いことについてはめっちゃ怖いやん…くらいのライトな感想で、ラストがなかなか切なくて好きな映画でした。ガーランド監督は、愛情や勇気、優しさ、協調みたいな一般的にポジティブと考えられる要素が命取りになって、地獄の蓋があくというねじれが好きなのかな…28日後もそういう話だしエクス・マキナもそうですね。

この映画は視覚効果賞でオスカーを取ってて、そこなのか??てニュースを見たときは思っていたのですが、いやまさにそういう映画でした。視覚効果が物語の持つテーマそのものを支えていて、すごく優れたデザインだった。プロダクトデザインとかしている人がみたら、きっともっと気づくところが多いのではないだろうか。

映画の中では自然物と人工物の対比が繰り返し出てきます。大自然の中に窓のない建築物があり、建築物の中には切り取られた自然が配置されます。いわずもがなそれは人間とAI、創造神と創造物の象徴で、ちょっとした入れ子構造になっている。最終的には創造物が創造神となって入れ子構造が逆転します。

で、私がすごく感じたのは、果たして自然物と人工物の間にあるものは「違和感」なのか?ってことなんですよね。私の目には、人間の形からは遠いエヴァアリシア・ヴィキャンデル)のデザインはとても自然と調和しているように感じた。それは神が作った人間(自然)と、人間が作ったAI(人工物)という構造を意識させるものでもあるんですけど…。

映画を見に行く前に科学未来館に遊びに行って、素粒子の展示を見ていたんですが、物質と反物質の説明をみて、なんて世界みたいなんだって驚きましたよね。世界がペアにならずにひとつだけはぐれた物質から生まれてるなんて…なんて優れているデザインなんだろう。本当なのかな???エクス・マキナを見ていてそのことを思い出しました。

 

アリシア・ヴィキャンデルのあの動きは、全部本当の本人の肉体の動きなのかな?動き出す前に機械が計算している間の静止が本当にアンドロイドみたいでな。人形じみてるけどすごく肉体を感じさせる女優でした。

ケイレブ(ドーナル・グリーソン)は、孤独と、寂しさと、甘えが入り混じったナイーブさで世界の断面と相対して、思いっきりビンタを張られて膝をつくわけですが、ドーナル・グリーソンはそういう役柄をさせるとすごく輝く。おいて行かれる役がとても似合う。FRANKもそういう役で、すごくよかったですね。エクス・マキナではビジュアルも実に的確で、アリシア・ヴィキャンデルよりドーナル・グリーソンのほうがビジュアルというかデザインとして優れているのではと思ってしまうほどでございました。今回もとてもはまり役だった。今後も楽しみな俳優さんです。

ネイサン(オスカー・アイザック)もめちゃ不気味でよかったな~~。彼がクレイジーなのかどうかを疑うというよりは、クレイジーは確定していてそのクレイジーを是とするか非とするかっていう話なんだけど、終盤までケイレブはネイサンにセックスをコントロールされるか殺されるかしてしまうのではとドキドキしていました。

あとエンドロールの音楽も映像もすごくクールだった!眼福な映画でした。良作だと思います。エヴァの肉体はエロチックだった~。