ルーム(レニー・エイブラハムソン/カナダ・アイルランド/2015) 世界は私の瞳に映るもの

20160416、としまえんにて鑑賞。

公式サイトはこちら

gaga.ne.jp

まあ泣くであろうと思われたのでキャストオフして映画館に行き、案の定めちゃくちゃ泣いた。すごくよかった部分ともう一声という部分が入り混じっていますが、総体でいくと面白かったです!


まず、すごく良かったところは、『世界』はわたしの手触り、わたしの瞳に映るもの、耳に飛び込み、匂いがして、味わうもの、そしてみたことないものが初めて広がった時の恐怖と好奇心と、喜びがスクリーンに現れる美しさでございます。ルームから出た後の青空よ。

青空のシーンでドランのmammyの、画角が広がるシーンを思い出しました。で、これは比べるのがいいのか悪いのかわからんのですが、物足りないと思うところは、子どもがあまりに物分りがよすぎやしないかという点です。つまり、世界への自由に対してポジティブすぎるというか…

シチュエーションからわかる通り、世界にはとても重たい事実が含まれている。自分の外側からだけじゃなく、内側からも既定の倫理から解き放たれた自由はどうしようもなく轟々身を焦がして、人は悶絶する。mammyはその上で世界の美しさを撮ってみたわけだけど…。

でも、ジャックのあの健やかさが、ルームの中で必死の思いでジョイが強く守り通したものなのだと思えば、ジャックの健やかさに応える世界の暖かさは、彼らが血みどろで勝ち取った自由なのだとも思う。ルームの内側にジャックは正しく別れを告げ、広い世界にこんにちはしたのだ。

荒れ狂う炎の部分はオブラートに包んで、天窓から見えた小さい空がスクリーンいっぱいに広がった時のカタルシスを、ただただ祝福しているんだなって思う。私に子どもがいたら嗚咽が出てしまっただろうと思う。

ブリー・ラーソンはオスカーにふさわしく。大仰な感情表現は抑え、息子のためにぐっと理性で踏ん張る重心の低い演技。下手くそな演技の演技がうますぎて、めちゃハラハラしまたわ。スリラー部分も良く出来た映画です。

ジャック役のジェイコブ・トリンブレイは、あれは演技なのかな…わからない。どのような理由であってもあの世界に直面した時の横顔を撮ったのはすごいことです。その辺は誰も知らないを思いだしました。

その他。おばあちゃんの彼氏のトム・マッカムスがめちゃんこ優しそうでホッとした。7年の間にじいちゃんとばあちゃんの関係が破綻してたのもすごく良かったです。世界の残酷さと複雑さを短い出演時間の中でズバッと切断面見せたウィリアム・H・メイシーの瞳はやっぱすごいなと思った。